本文
新型感染症が流行ろうが、地震が来ようが、過疎指定されようが、春は来る。花は咲く。紅梅、雪柳、連翹、桜、椿、白木蓮、桃、花海棠、蒲公英…。自然は変わらない。人の都合なんか気にしない。彼らは、一つ高い次元にいるような、突き抜けてるような。
心躍らせ、胸膨らませ、新しい日に踏み出した人たちを祝福しながらも、鉛を吞んだような、晴れ晴れしくない3年目の春が過ぎる。
何年前からだろう、ゴツゴツした庭石の窪みに躑躅が根を張っている。こぼれた種から芽吹いたもの。環境は最悪だと思う。だから背丈も幅も3センチほど。一向に育たない。花を咲かせたこともない。見るたびに「元気か? よりによって何でここなの? もっと生きやすい所があったろうに」と思ってしまう。
でも、小さく儚げだけど生きてる。凛としてる。逆に諭されてるのかも。庭石の上にいる躑躅。国見から出ようと思わなかった自分。厳しい場所にいる木や花や草は、人が勝手に「苦」と思ってるだけで、彼らはここが自分の居場所、生きる場所だと顔を上げて宣言してるのかもしれない。そう思うとまた前を向ける。
Copyright (C)Kunimi Town All rights reserved.