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2年ほど前、製造業に17年間就いていた美幸はふと立ち止まった。60歳になったとき、人生に満足しているだろうか。誇れる何かが自分の中にあるだろうか。
そんなある日、ふと目にしたのが、果樹畑に向かう父と兄だった。「お父さん小さくなったな…」。しかし、父・一吉は「60歳を過ぎてから農業が楽しくなった」と笑い、生涯現役を豪語する農業人。
「父のように生きよう…」と決心した美幸。娘の思いを受け止めた父は「樹齢40年になるぶどうの樹はお前が切れ」と伝えた。
山の果樹園を名乗る高橋フルーツは、名産品の桃、柿のほか、ぶどう、さくらんぼにも力を入れている。「ぶどうを始めたのは40年くらい前。減反政策の一環として、水はけのいい田んぼを果樹園に切り替えて、巨峰の苗を植えたのが最初です」と父・一吉。理由は、黒く輝く大粒の巨峰のおいしさに感動したから。
このおいしさでより多くの人を笑顔にしたい。その一念で始めたのだという。
「人に喜ばれることだけを考えなさい。子どもの頃から聞かされてきた教えは、父の生き方そのものであり、高橋家の家訓となっています」と美幸。
あどけない少女時代、収穫の手伝いをしながら、「ここのフルーツを食べるとよそでは食べられないよ」と顔をほころばすお客さまの顔を思い出し、「そうだ、私はここでちゃんとモノをつくれる人になろう」と決心。夫と2人の娘を送り出した後、実家の農園へ出勤する生活が始まった。毎日がきらきら楽しいと笑う。
その美幸には心強い相棒がいる。兄・一徳だ。
一徳もサラリーマン生活を経て8年前に家業に入った。ともに家業から一旦離れたことで農業を客観的に見つめることができたという。労多く厳しい仕事ながら、それを超越する豊穣の至福。兄と妹は農業の尊さを知った。
「剪定や土づくりなど、自分のぶどうのおいしさに納得できるまで、30年近くかかりました。フルーツづくりは樹を壊す覚悟で勉強しないとダメなんです」と語る父・一吉。
父から兄妹の時代へとゆるやかに舵が切られつつある高橋フルーツ。父から子へ熟練の継承、農業に目覚めた兄と妹の新たな挑戦。珠玉のフルーツのおいしさに、ますます磨きがかかる。
ぶどうの王様、巨峰。このぶどうこそが高橋フルーツのぶどう栽培の歴史を牽引してきた。
種なし、種ありがあるが、濃厚な味わいは種ありに軍配があがる。
ただいま人気急上昇中の品種で、2006年に登録された新しい白ぶどう。
マスカットに通じる爽やかさのある甘い香り、高い糖度、濃厚な旨味が魅力。プリッと皮ごと食べられることでも人気。福島では県北エリアの数軒のみで栽培。
地球温暖化、天候不順など、農業には不安要素が伴うもの。
「だからこそ、今年はどう? 収穫はいつ頃? といったことを聞ける農家と親しくつき合っているといい」と父・一吉。写真は妻の静子さんがつくる梅の甘漬け。